第2章 学歴税(マトリクス累進)を導入せよ!

2−14 大奥の原理

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 特権階級は、己の特権を守る事しか考えないものである。
口先では「機会均等」などとキレイ事を唱えていても、腹の中では....

@ いかにして自分の息子に英才教育を施し、他と差別化するか、
A いかにしてよその子供の足をすくって倒すか、

それしか考えない。 これを(本書では)「大奥の原理」と名付ける。
それは基本的に保守派も左翼も同じ、権力を握れば人間皆そうなるのである。
 私の人間観からすれば、そういった人間のエグイ部分は、隠蔽化するのではなくむしろ白日の下に晒してやった方がよい。 なぜならばエグイ部分を隠蔽化してしまうと、裏手で何をやっているかますますわからなくなり、いっそうやっかいな事になるからである。
口先では「機会均等」などとキレイ事を唱えながら、実際やっている事は逆「人の足をすくって倒す」それしか考えていないような場面もしばしば見られる。
 いっそ金持ちは、お受験だとか特訓だとか、回りくどいやり方ではなく、堂々と「金の力で他と差を付け」大学へ行けばよい。 土地財産同様「生涯にわたって学歴税を払ってくれればそれで良い」のだ。 このようにして金持ちの頭を冷やす、そうすれば黙っていても、貧乏人にも機会が回ってくる。
 奨学金のおかげで貧乏人が大学に行けるようになっても、それに危機感を抱いた金持ちブルジョアは、金の力にモノを言わせ、さらにその上を行くものである。
結局のところ、やたらと高学歴化を進め社会全体の教育コストを増大させるばかりで、平等は実現できない。 奨学金といえども結局「バラマキ」に過ぎないわけである。
 だからむしろ機会均等を実現するためには「やたら貧乏人を大学に行かせようとする」階級闘争史観ではなく「金持ちを大学に行かせない方法」を考えた方が正解である。
もちろん金持ちの息子でも、学問に向いている者は、大学に行けば良いが、すべての金持ちの息子が学問に向いているわけではない(商売の方が向いているのかも知れないのである)。
 左翼の人たちは、より多くの子供が大学に行く社会を作る事が平等を実現する手段と考え、それで保守派を追いつめようとする。 それに対し保守派は抵抗する。 だが私が思うにやり方が逆ではないか? 本当に平等を実現したいのなら、土地財産同様「学歴にも課税する」それが筋ではないか?
「課税することでむやみな学歴取得を抑制する」そうすれば生涯学習社会への移行が起こり、貧乏人も大学に行きやすくなる、真の平等、真の機会均等が実現できる。
それが私の主張する「学歴税」である。

 これまで左翼は、学校増設、入試改革、奨学金制度によって平等を実現しようとしてきた。
しかし冷静に考えて、このやり方で平等は実現できるのかと言えば否である。 みんなが高校・大学に行けるようになっても、いわゆる名門志向型の受験地獄はなくならないし、貧乏人が大学に行けるようになったら、その頃はもう金持ちは大学院に行くのが当たり前になっているだろう。
いつまでたってもイタチごっこ、平等なんて永遠にやって来ない。
それどころかますます高学歴化が進み、イヤな社会になって行く。
国民の負担は重く、教育ビンボーになるばかりだ。
教育費を稼ぐためオヤジは過労死し、そして少子化・年金制度の破綻を引き起こす。

左翼は「みんなが大学に行く平等社会」を作り出す事で「カネモチ特権階級」を追い詰めているつもりだろうが、実際に追い詰められているのは貧乏人の方である。
左翼のやり方では平等は実現できない―――それは単に思慮が足りないおバカさんだからなのか、それとも本当は平等なんて真面目に考えてなくて、革命を起こし権力を握るまでの方便として、平等・人権・平和・反核を利用しているだけなのか、良く分からないが―――いずれにせよ左翼のやり方では平等は実現できない。

 学生を優遇する事で進学率が向上し、それにより「平等社会が実現できる」と、これまで考えられて来たが、本当は逆ではないか?
いくら進学率が向上しても、金持ちはもっと上の学校に行くだけ、あるいはレアな難関校を目指すだけの話、教育コストは増大する一方、そのために貧乏人はますます搾取される。
 学歴も土地財産同様、課税対象とすべきである、そうする事でむやみやたらな学歴取得を抑止でき、生涯学習社会への移行が起こる。
本当に効率の高い、真の平等、真の機会均等が実現できる。
それが本書の主張である。

学歴税は、国家財政に一切負担をかけずに、各家庭の教育コストを削減し、少子化問題を解決する優れた税である(それで倒産する大学が出て来るかも知れないが、それは一般企業では普通に行われている新陳代謝である)。 特記すべきは学歴税が引き金となって学歴封建体制が崩壊し、生涯学習社会への移行が起こる、社会の相転移が起こる、これこそが本当の革命である。

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