第2章 学歴税(マトリクス累進)を導入せよ!

2−16 「親の負担ゼロ」を実現する手順と「3つのポイント」

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 子供手当や児童手当のような、単なるバラマキをやめ、次の手順で改革を行えば親の負担を大幅に減らすことができる(ゼロにすることができる)。
まず手順について、私がここで「手順」と述べるのは、順番が意味を持つからである。

【手順1】学歴税(マトリクス累進型所得税)を導入し、安易な学歴取得を抑止する
    (大学・受験産業へのカネの流れを抑制する)

【手順2】国家が子供を養う制度にする(子供限定ベーシックインカム)

【手順1】と【手順2】の順番は重要である。 【手順1】をやらないで先に【手順2】をやると、それで浮いたカネが大学や受験産業に流れ、彼らを儲けさせるだけの結果に終わるから要注意である。
この手順さえ守れば、従来の「バラマキ」とは根本的に異なって、相当な効果が得られるという点で画期的である。

この手順により、親の負担は「ゼロ」になり、少子化も年金問題も一発で解決する。
これは日本国民のありとあらゆる階層に利益をもたらす制度といえよう。
とはいえ「話がうますぎる」「負担がゼロなんて信じられない」という人もいるだろう。
そうした人たちのために、もう少し詳しく説明しよう。 そこには、重要な3つのポイントがある。
 まず、【手順1】についてだが、これは親のすねをかじって大学に行くという事にブレーキを掛け「大学行きたけりゃ自分で稼いで行け!」を社会のルール・競争条件にすることだ。 そうすれば子供が2人いようが3人いようが「それぞれ自分で稼いで」大学に行くわけだから親に負担はかからない。

もっとも生涯学習社会においては、親自身が大学に行くかもしれないが、それでも自分1人分、少なくとも子供の人数Nに比例する負担はなくなるわけだ。

つまり【手順1】に関しては、これはマジックでもトリックでもない「真の負担軽減」であり、少子化問題も年金問題も、これでかなり改善する。 つまりこれが1つ目のポイント「真の負担軽減」である。
 次に【手順2】の「国家が子供を養う制度」だが、これには若干のマジックが含まれている。
正直に言おう。 国家が子供を養うと言っても、結局は親が支払っている税金で養われるわけで、正真正銘の負担ゼロというわけではない。 【手順2】については、それなりの税負担は覚悟しなければならない。 しかし先に述べた【手順1】の「真の負担軽減」と組み合わせる事により、許容範囲に収まる。

増税以外の財源としては、生まれた赤ん坊1人につき百万円、国家が「紙幣印刷する」という手もある(コウノトリマネー)これは少子化対策だけでなくデフレ脱却にも有効である。 まさしく「金本位制」ならぬ「赤ん坊本位制」もっともこれはあくまでも「人口増に直結する=赤ちゃん限定」の範囲で行うべき、せいぜい百万円程度が限界だろう。 もちろん紙幣印刷で大学無償化なんて論外、安易にやるものではない。
紙幣印刷は、タンス預金からも「貨幣価値の目減り」という形で徴税する「国家最強の税」安易にやると超インフレを招き「給与所得者を苦しめる」「消費税どころではない最強の逆進税(MMT税)」となる。
ちなみに紙幣印刷と国債発行の違いは、現金とカードの違い、カードは後から請求が来る。 先送りに過ぎない。 しかも国債は放漫財政の発覚を遅らせるために利用される可能性もある。 回りくどい国債発行よりもダイレクトに紙幣印刷(新札)の方がコウノトリマネーにふさわしく、インフレ目標も制御しやすい。
MMT理論にしろ、ベーシックインカムにしろ、適用範囲がある。 万能薬のように考えてはいけない。

 国家が子供を養うというのは、子供の衣食住と医療を国家が保証し、子供が周囲に経済的負担をかけることなく生きて行けるようにすることで、これにより親の負担は激減する。 もっとも、私は社会主義者ではないので「税金をいくらでもどんどん取れば良い」などという考えは持っていない。 世界には「大学の授業料は無料」なんていう福祉国家もあるが、石油が湧いてくるならともかく、そこまで国家がやる必要はない。 あくまでも「高卒で就職」を前提にすればよい。 それに今の日本で「大学は無料」なんて事にしたら「無料」を巡って激しい受験戦争が起こり、虐待される子供も増えるだろう。 受験準備にやたらカネがかかり「授業料は無料だけど、やっぱり金持ちしか大学に行けない」というオチにもなりかねない。 だからあくまでも「高卒で就職」を前提に、国家が子供を養うようにすればよい。

大学無償化は、貧乏人救済の制度なのか、それとも金持ち優遇の制度なのか、それとも大学関係者の失業対策のためなのか?
授業料だけを無料にしても、教科書代もいる。 しかも生活費がなければ生きて行けないから、やはり金持ちしか大学には行けないだろう。 それとも(司法修習生のように)生活費も支給してくれるのだろうか?
石油が湧いて来る国は、授業料以前に医療費が無料である。 カネがなくて望み通りの治療(混合診療)が受けられない人がいる日本で、大学の授業料だけを無料にするのは、著しくバランスを欠く行為、むしろ我が国は、逆に課税する事で「過剰な学歴」「中身のない学歴」を減らし、リストラを進めるのが正しい。
そもそもその医療費でさえも、完全無料にしてしまうとモラルハザードが起こる(モラルハザードは健康管理を怠る患者だけの問題ではない、医療機器メーカーも製薬会社も医者もみなコスト削減努力を怠りがちになる)大学無償化はモラルハザードを吹き飛ばすくらいの勢いで石油が湧いて来ない限り無理である。

「高卒で就職」を前提に、国家が子供を養う―――ただこれは血税の投入を前提にしている点で「真の負担軽減」ではないが、少なくとも「見かけ上の負担軽減」にはなる。
これが2つ目のポイント「見かけ上の負担軽減」である。
 だがさらに(ここからが重要なのだが)「国家が子供を養う制度」には別のメリットがある。
国家が子供を養うようになれば、当然国家が予算を管理するわけで、少人数学級や、習熟度別、個別指導、IT技術の活用など、本当の意味での効率化が図られる事になる。
なぜそうなるのか、逆に言うとなぜ今までそうならなかったのか、それはコスト管理のやり方に問題があるからである。 それはどういう事か、次に詳しく説明しよう。
 これまでは「子供の人件費はタダ」と思われてきた。 国家は教師の人件費を計算する事はあっても、子供の人件費は計算して来なかった。 教師の人件費だけを考えれば、少人数学級はコストアップという事になるが、物事は総合的に判断する必要がある。 子供にだって、実際には莫大な人件費がかかっているのだが、それはこれまで(子供を養っている)親が負担していたため、見えなかっただけである。
国家が子供を養うとは、即ちそれを「見える化する」という事である。
産業の合理化、生産性向上、IT技術の導入が、当たり前のように進む中、ひとり学校だけが取り残されて行くのは、子供の人件費はタダだと思っているから、コスト意識が欠如しているからだ。
 但しコスト意識といっても、くれぐれも誤解のないように、教師の人件費を削減しても、それによって生徒が授業について行けなくなり、生徒の人件費が無駄になるようでは、本当のコスト削減とは言えない。 むしろコストは増大してしまう。
教師の人件費と生徒の人件費の合計を最小にしてこそ、真のコスト削減、国民負担の軽減となる。
そのためには「教師の人件費と生徒の人件費は一括管理」する必要がある。
 一括管理を導入すれば、教育内容の改善や時代のニーズに合わせた最適化はもちろんのこと、少人数学級や習熟度別、IT技術などの効率化手段を浸透させ、冷暖房や温水プールなどの環境改善も進む。 さらに学校と塾とスポーツクラブが融合し、統合効果による効率アップが実現すれば、子供をわざわざ塾に行かせる必要もなくなる。 これらの相乗効果を併せれば「親の負担ゼロと言っても全く差し支えないレベル」にまで到達するだろう。 これが3つ目のポイント「生産性向上」である。
 教育にしろ、福祉にしろ「見かけ上の改善」を考えている政治家はたくさん居るが、見かけ上は良くなっても、そのために税金がグーンと上がるのでは意味がない。
もちろん「見かけ」も大切ではあるが、それだけではダメだ。 右にあるカネを左に動かす「単なるバラマキ」だけでは、いずれメッキが剥がれる。 まとめると次のようになる。

@ 真の負担軽減(子供はそれぞれ自分の稼ぎで大学へ行くルールにする)  → 子供が2人いようが3人いようが、親の負担(教育費)はそれに比例しない
A 見かけ上の負担軽減(国家が税金で子供を養う)  → 子供限定BI、またその一部にMMT税を導入するのが「コウノトリマネー」
B 効率化・生産性向上(国家が教師と生徒の人件費を一括管理する事で生産性向上を図る)

この3つが揃って初めて真の改革、進歩となる。
以上、これが「親の負担ゼロ」を実現する「3つのポイント」である。
 科学技術は日進月歩、コンピュータの性能は年々倍増し、安くて良いものが手に入る時代、なぜ教育だけがこれほどまでに生産性が低く品質が悪く、国民の重荷になっているのか?
教育だってもっと生産性が上がるはずである。 「親の負担ゼロ」は決して夢ではない。
以上、日本を救う処方箋は次の通りである。


@ 国家が子供を養う制度(子供限定ベーシックインカム、及び、コウノトリマネー)
A 学歴税(単なる横並び意識から来る安易な学歴取得を抑止し@で浮いたカネが大学・受験産業に流れる事を防止する)

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